PICK UP ITEM vol.5
バイヤーズセレクト(献上品の品格を纏うナゼム柄ルリバフ)
我らがバイヤー、三代目亀川雅史がオススメする絨毯を絨毯販売歴40年の佐藤氏とご紹介する人気のコーナー。
バイヤー自らが買い付けた手織り絨毯の一押しコメントも必見!是非、新たな1枚を手に入れる参考にしてください。是非、Youtube動画でもご覧くださいませ。
今回は、ギャッベの中でも最高峰の格付けを持つ「ルリバフ・ファイン(Luribaft Fine)」。その神聖な文様に隠された歴史と、素材への飽くなきこだわりを紐解くコラムをお届けします。
それでは、いってみましょう。
ギャッベが到達した「聖域」/献上品の品格を纏うナゼム柄ルリバフ
素朴な風合いが魅力のギャッベ。しかし、その概念を根本から覆すような一枚が存在します。それが「ルリバフ・ファイン」です。通常のギャッベが縦糸にウールを用いるのに対し、この作品はシルクの縦糸を採用しています。シルクの糸を水でしごき、均一な張力をかけることで、ウールでは不可能なほどの緻密な打ち込みを実現した、まさに「特別」を体現する一枚です。
領主に捧げられた「ナゼム」という名の誇り
この絨毯の最大の特徴は、中央に描かれた美しいアーチ状の紋様です。一般的にはイスラム礼拝堂の入り口を模した「ミフラブ(お祈り用)」と呼ばれますが、カシュガイ族の歴史においては「ナゼム(Nazem)」という特別な名で呼ばれます。
その背景には、かつてペルシャの王に仕え、数々の功績を挙げたカシュガイ族の領主(族長)の物語があります。その領主の名が「ナゼム」。彼の勇気と功績を称え、部族の人々が献上品として特別に作り上げたデザインこそが、この聖なるアーチなのです。ギャッベという自由な形式の中に、この格調高い「ナゼム」が取り入れられていること自体、極めて稀で意義深いことだと佐藤氏は語ります。
「幸運の使い」と「緻密な枝」に込められた祈り
絨毯の細部を注視すると、そこには織り手の祈りと高度な技法が凝縮されています。
裏切らない鳥「ヤツガシラ」
ボーダー(外枠)には、向かい合う鳥たちが整然と並んでいます。これは古代ペルシャの伝説に登場し、ソロモン王に良い知らせを届けたという聖なる鳥「ヤツガシラ」です。一度交わした約束を違えない「誠実さ」と「幸運」の象徴であり、この家の人を裏切らず、幸せを運んでくるようにとの願いが込められています。
「シャー・セカステ(枝紋様)」の魔法
フィールドを埋め尽くす花々の枝は、あえてカクカクとした直線的なラインで描かれています。これを「シャー・セカステ(折れ枝)」と呼びます。柔らかな曲線ではなく直線を用いることで、限られたスペースを最大限に活用し、一面に咲き誇る花々の密度を高めているのです。佐藤氏が「意地の悪いデザイナー(それほど緻密な指示)」と冗談めかして評するほど、織り子に高い技術を要求する意匠です。
触れることで完成する「究極の肌触り」
ルリバフ・ファインが持つ、シルク混じりのしなやかな質感は、見るだけでは分かりません。シルクの縦糸によって極限まで細かく織られた表面は、通常のギャッベとは一線を画す柔らかさと、はっきりとした文様の輪郭を生み出しています。
最後に、一期一会の「看板」となる一枚。
「これほどのナゼム柄には、滅多にお目にかかれない」。長年絨毯を見てきた佐藤氏にそう言わしめるほど、この作品は希少な存在です。
単なるインテリアとしての敷物を超え、部族の誇りと聖なる物語、そして最高級の技術が融合したルリバフ・ファイン。そのアーチの前に座ることは、かつての領主が受けた敬意と、悠久の歴史が運ぶ幸運を家の中に迎え入れることに他なりません。その驚くほど緻密な「裏側」の美しさまで含めて、ぜひ一度その手で触れていただきたい、至高の芸術品です。
◎ご紹介した絨毯
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サイズ 267×173 (10000207)
ランク ゾランヴァル・ルリバフファイン
品 番 10000207