PICK UP ITEM vol.3
バイヤーズセレクト(バルーチ族とトルクメン族の美しき融合)
我らがバイヤー、三代目亀川雅史がオススメする絨毯を絨毯販売歴40年の佐藤氏とご紹介する人気のコーナー。
バイヤー自らが買い付けた手織り絨毯の一押しコメントも必見!是非、新たな1枚を手に入れる参考にしてください。是非、Youtube動画でもご覧くださいませ。
今回は、バルーチ族とトルクメン族の文化が交差する「融合の美」について、そのミステリアスな背景と技術的価値を紐解いています。
それでは、いってみましょう。
「バルーチか、トルクメンか」二つの部族が交差する奇跡の一枚
今回ご紹介するのは、仕入れの現場でも鑑定が分かれたという、非常にストーリー性の高い絨毯です。当初「バルーチ族」のものとして買い付けられましたが、輸入リストには「トルクメン」と記されていたという、謎めいた背景を持つ一枚です。
二つの部族が織りなす「境界線」の物語:バルーチとトルクメンの出逢い
絨毯の買い付け現場では、時にプロですら頭を悩ませる「謎」に出会うことがあります。今回ご紹介するのは、仕入れ時には「バルーチ族」のものとされながら、輸入リストには「トルクメン」と記されていた、非常に稀有な一枚です。そこには、単なる分類を超えた、部族間の文化の混じり合いと、織り手の並々ならぬこだわりが宿っています。
守護の意匠「結界」と、バルーチの強靭なエッジ
まず、目を引くのは、絨毯の両端(トップとエンド)に施された「結界」と呼ばれる模様です。これは、家の中に邪悪なものを寄せ付けないためのお守りとして、トルクメン族が伝統的に用いる様式です。
しかし、その両サイド(エッジ)に目を転じると、そこにはバルーチ族の強い生活の知恵が見て取れます。絨毯の中で最も傷みやすいこの部分は、羊毛よりも遥かに強靭な馬の毛やヤギの毛で補強されています。この「最強の補強」こそが、過酷な環境で生きるバルーチ族の絨毯づくりの証なのです。
物理の限界に挑む「シルクの縦糸」
この絨毯をさらに特別なものにしているのは、その「芯」にあります。通常、バルーチ絨毯はウールや綿を縦糸に使いますが、この一枚にはシルクの縦糸が採用されています。
なぜ、あえてシルクなのか。それは、より緻密で正確な文様を刻むためです。シルクの糸を水でしごき、一定の張力を保ちながらピンと張ることで、ウールでは不可能なほどの高い密度を実現しています。その結果、バルーチ特有の「生命の木(ライフ・オブ・ツリー)」や動物たちのモチーフが、より鮮明に、より力強く浮かび上がるのです。
「砂漠の宝石」が辿り着いた、究極のシック
バルーチ絨毯は、闇夜に浮かぶ宝石のような赤と白のコントラストで知られていますが、この一枚が選んだのは、全体をブラウンで統一した極めてシックな色彩でした。
「バルーチにしては珍しく、トルクメンにしても変わっている」。佐藤氏がそう評するように、二つの部族の居住区が重なる境界地帯で生まれたこの絨毯は、両方の良いところを抽出したハイブリッドな美しさを放っています。
最後に、 自慢できる「一枚」との対話
絨毯とは、単なる敷物ではなく、その土地の歴史や織り手の遊び心が詰まった芸術品です。トルクメンの様式美とバルーチの堅牢な技術、そしてシルクという異素材の融合。
このユニークな「謎解き」を楽しめる一枚は、マニアにとっても、あるいは実用性を重んじる方にとっても、一生を共にするにふさわしい「自慢の財産」となることでしょう。部族の境界線上で生まれた奇跡の調和を、ぜひその手で体感してみてください。
◎ご紹介した絨毯
サイズ 177×117
ランク バルーチ
品 番 299352