PICK UP ITEM vol.7
バイヤーズセレクト(正方形エスファハンが放つ唯一無二の存在感)
我らがバイヤー、三代目亀川雅史がオススメする絨毯を絨毯販売歴40年の佐藤氏とご紹介する人気のコーナー。
バイヤー自らが買い付けた手織り絨毯の一押しコメントも必見!是非、新たな1枚を手に入れる参考にしてください。是非、Youtube動画でもご覧くださいませ。
今回は、エスファハン絨毯の中でも極めて珍しい「正方形(スクエア)」の一枚。その完璧な造形美と、タイル職人の息づかいまで再現した遊び心溢れる魅力を紐解くコラムをお届けします。
それでは、いってみましょう。
「美の均衡」を覆す挑戦:正方形エスファハンが放つ唯一無二の存在感
ペルシャ絨毯の世界において、正方形の作品に出会うことは滅多にありません。なぜなら、イランの人々にとっての美の象徴である「庭園」は長方形が基本であり、シンメトリー(左右対称)を重んじる彼らの美意識では、正方形は「まとまりにくい」と敬遠されがちな寸法だからです。
しかし、今回ご紹介する2.5メートル角の正方形エスファハンは、そんな伝統的な制約を鮮やかに超えた、熟練の職人たちの「意地の結晶」とも言える一品です。
聖なるモスクの「タイル」を織り込む遊び心
この絨毯の最大の見どころは、一見すると直線の幾何学模様に見える「グリッド線」です。これは単なる模様ではなく、イマームモスクなどの壁面を彩る「タイル」を表現しています。
面白いのは、タイルの「ひび割れ」や、手作業で切った際の「わずかな形の崩れ」までもが、あえてデザインとして再現されている点です。さらに、タイル一枚ごとの「焼きムラ(色の濃淡)」までもが計算して織り込まれており、まるでモスクの壁面をそのまま切り取って床に広げたかのような、立体的で奥深い表情を楽しめます。
技術の逆転 シルクが主役の「フィールド」
技術的にも、この一枚は非常に挑戦的です。通常、シルクを織り込む「パートシルク」技法では、柄を際立たせるためにシルクを使いますが、この作品はその逆。フィールド(背景)にシルクを贅沢に使い、柄の方をウールで描いています。
シルクはコシが弱いため、広範囲に使うと表面がデコボコになりやすいのですが、この絨毯は驚くほどフラットに叩き込まれています。これは、4〜5人の熟練工が完璧に息を合わせ、均一な力で織り上げた証です。
神聖な「緑」と「雲のリボン」の物語
中央に鎮座する大きなメダリオンを彩るのは、深く、それでいて瑞々しい「神聖な緑」です。緑は古代ペルシャから大切にされてきた色であり、メダリオンをより一層引き立たせています。
また、ボーダー(外枠)には、中国から伝わったとされる「雲のリボン(雲龍紋)」が散りばめられており、数百年前のシャー・アッバース時代から続く伝統的なデザインの重厚さを物語っています。
最後に、日本の住まいに調和する「箱庭」の美学
正方形の絨毯は、日本の四畳半や八畳、あるいはリビングの中心に「箱庭」のような安定感をもたらしてくれます。中央に大きなテーブルを置いても、計算し尽くされたメダリオンのバランスは崩れず、どの角度から見ても優雅な気品を失いません。「正方形を作らない」というイラン人の美意識と、それをあえて絨毯という形で完成させた職人のプライド。そして、タイルの焼きムラを愛でるような遊び心。 この一枚は、単なるインテリアの枠を超え、あなたの部屋を「聖なる都の欠片」へと変えてくれるはずです。
サイズ 250×250(PS11079)
ランク エスファハン・ダーブッド工房
品 番 PS11079