PICK UP ITEM vol.1
バイヤーズセレクト(鉄の絨毯ビジャー)
我らがバイヤー、三代目亀川雅史がオススメする絨毯を絨毯販売歴40年の佐藤氏とご紹介する人気のコーナー。
バイヤー自らが買い付けた一言推しコメントとともにお届け! 是非、新たな1枚を手に入れる参考にしてください。
「鉄の絨毯」ビジャー(Bijar)の深淵な魅力。単なる頑丈な敷物という枠を超えた、その芸術性と歴史的背景を紐解くコラムをお届けします。
それでは行ってみましょう!
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「鉄」の名に隠された、しっとりとした質感の正体

ぺルシャ絨毯愛好家の間で「アイアンカーペット(鉄の絨毯)」と称されるビジャー。その名の由来は、縦糸を力強く叩き込み、垂直に立つほど密に織り上げられた圧倒的な堅牢さにあります。しかし、佐藤氏が真に「本物」と称えるビジャーは、決して硬く無機質なだけではありません。
現在、市場の主流となっているのは、シルクを混ぜて光沢を出した「アフシャル・ビジャー」と呼ばれる華やかなタイプです。これらは確かに豪華ですが、質感はどこか「パサっ」と乾燥した印象を受けることがあります。 対して、100年前の製法を彷彿とさせる伝統的なビジャーは、手に取ると「しっとり、ぬめっ」とした、羊毛本来の油分を感じさせる重厚な質感を持っています。ノット(結び目)の細かさという数字上のスペックよりも、どれだけ糸を使い、どれだけ力強く打ち込まれたか。その密度の差が、摩擦を抑え、一生モノを超える耐久性を生むのです。
「アブラッシュ」が描く、経年変化という名の景色
絨毯の表面に現れる色の濃淡、通称「アブラッシュ」。これは決して染色ミスではありません。羊の個体差によって染料の吸い込みが異なるために生じる、天然素材ゆえのゆらぎです。 佐藤氏は、この色ムラを「景色」と呼びます。時が経つにつれ、色がゆっくりと抜け、深みを増していく過程は「経年劣化」ではなく「経年美化」。均一な赤一色の絨毯にはない、時間の経過が育む複雑な味わいこそが、ビジャーを眺める醍醐味なのです。
デザインに込められた職人の「遊び心」と「謎解き」
ビジャーといえば「マヒ(魚)柄」が代名詞ですが、初期の伝統的な意匠は実は「フラワーデザイン」にあります。 今回紹介された一枚には、本来なら四隅に配置される「雲のリボン」が中央に配されていたり、花瓶を模しながらもペンダントのような独創的な形をしていたりと、随所に作り手の意図が隠されています。
コバルトブルーやエメラルドグリーンの深い色が、フィールドの赤と共鳴し、見る角度によって異なる表情を見せる。それはまるで、「どんなデザイナーが描き、どんな職人が染めたのか」という時空を超えた謎解きをしているような感覚に陥らせてくれます。
最後に 一生を共にする「一枚」との出会い。
「計算し尽くされた美しさとはまた違う、物語が詰まった絨毯」。 佐藤氏の言葉通り、真のビジャーは、私たちの暮らしに寄り添いながら、数十年、数百年の時を刻んでいきます。もし、ずっしりと重く、しっとりとした質感のビジャーに出会うことがあれば、それは単なるインテリアではなく、人生の伴侶となるべき一枚かもしれません。
その「重み」の裏にある職人の情熱と、時代が育む「景色」に、ぜひ一度触れてみてください。
◎ご紹介した絨毯
サイズ 310×210(298056)
ランク ビジャー(ビンテージ)
品 番 298056